石垣
石垣の特色
石垣の特色
石材を用いて積み上げた塁。土を積み上げた土塁よりも銃器や火矢等に対し耐久力がある上に勾配を急にすることができる。また地盤がしっかりするため、傾斜ぎりぎりの所まで建造物が建てられるという利点ももつ。石落としはこの利点を利用している。


 




石垣の構造
石垣断面図
地盤が磐石でなく、木杭や胴木を用いる場合。
根石…石垣の一番下の石。少しなりとも地中に埋まっている事がほどんどであるが、地表の風化で完全に露出している場合もある。
天端石…石垣の一番上の石。
裏込(栗石)…石垣の裏側に積み込まれる小石(栗石)。10〜30cmくらいの割った小石が多く用いられる。石垣内部の排水を円滑に行う役目を持っており、この裏込が不十分だと、大雨の時など石垣が崩壊してしまう恐れがある。雨水は小石同士の隙間を流れて石垣下に排水され、水圧で石垣が崩壊するのを防ぐ。
最近国道で多く用いられる排水性舗装と同じイメージ。
胴木…地盤の強弱や石の重さによって、根石の沈下がバラバラに発生すると石垣全体の崩壊につながるため、この不等沈下をふせぐために根石の下に敷かれた柱。図の胴木は二本の材木を並べて敷き、その間を梯子状に結合させたものを描いている。
土中・水中の腐食に強く、大木が得やすい松が用いられることが多い。山城など地盤が磐石な場所に建てられた石垣には用いられない。
木杭…胴木の移動を防ぐための基礎木材。




使用する石材や積み方による石垣の種類
使用する石材によっての分類方法として主に「切込ハギ」、「打込ハギ」、「野面積」等があげられる。前者ほど頂上付近の勾配を急にすることができる。ただ慶長期に入ってからの城郭においても全ての石垣を切込ハギにすることは費用や期間的に多大になってしまうため、重要な部分を切込ハギを用い、それ以外は打込ハギや野面積を併用する場合も多い。野面積や打込ハギでは石と石の間に隙間が空いてしまうため、「栗石」と呼ばれる小さな石を詰めている。


また積み方として乱積み、布積み、整層積み等があり、これらに使用する石材による組み合わせにより、更にたくさんの積み方を見ることができる。
これ以外にも石垣の角等で使用される事が多い算木積み等の部分的な積み方や、大きな石を石垣に取り込んで積む笑い積み等の特殊な積み方がある。城によっては改修の際、石垣を組みなおしたり、追加する等によって時代によって異なる姿を見せている城も少なくない。


イメージとしては
石材の種類×石材の積み方そのた・部分的積み方
という感じ


石垣を用いている城は東海・近畿地方で特によく見かけられ、関東では極端に少ないという特徴がある。




主な石材の分類
野面積(野石積)
野面積は別名乱積とも言われる手法で自然石をそのまま積み上げたもの。切込ハギや打込ハギに比べると、勾配が急にできない、見た目が美しくないなど近世城郭にはほとんどみられなくなる。

浜松城の石垣。粗い積み方ではあるが迫力があるという見方もできる。
また、野面積の一種で「牛蒡積」という方式がある。これは胴長の石を使用し、積む際に面積の大きい面を内側に長く押し込む方式。見た目は隙間も大きくよわよわしく見えるが実際にはかなり強固な組み方となる。
上の浜松城石垣にもこの牛蒡積が使用されている。
打込ハギ
打込ハギは石の角を叩いて形を整え積まれたもの。安土桃山時代に建造された石垣のほとんどはこの方法である。

熊本城の打込ハギ。石垣が有名な城はこの積み方をされていることが多い。
切込ハギ
切込ハギは石を一つずつ方形に整え、隙間ができないように積まれたもので、石垣としては最も進化したものとなる。慶長期の城に多い。

丸亀城大手門の切込ハギ。




主な石垣の積み方
布積
古くから用いられている方法で基本的には単純に下から石材を積んでいく積み方。二つの石の上に互い違いに石を積んでいき、均等に重量がかかるようにしている。

どこかで見た写真ではあるが、和歌山城の切込ハギ布積み


乱積
安土桃山時代以降の石垣に用いられた積み方。高度な計算が必要となる。横の筋は見られない。
大和郡山城の野面乱積。




その他・部分的な石垣の積み方
算木積
石垣の角等で用いる積み方。石材を各辺に対して整然と積む方法で見た目も美しいためよく用いられた。
写真は名古屋城石垣角の算木積み。
亀甲積
その名の通り亀甲形に岩を整え組んだ石垣のことをいう。真四角の岩を組むより重量が均等にかかる為崩れにくい。




宮勾配と寺勾配
石垣の勾配の仕方を分ける用語。宮勾配は神社(宮)の寺勾配は寺の屋根の形式から名づけられた。宮勾配は石垣の縁が弓状に沿ったもので緩い斜面からきつい斜面に推移していき防御性は高いが野面積等ではこの傾斜を作ることは難しい。寺勾配はそれが直線的なものを言う。野面積はほとんど寺勾配となる。
宮勾配

 丸亀城石垣
下部は傾斜が緩く、上に上がるに従って傾斜が垂直に近づく石垣。武者返しと言われる防御力の高い石垣。
また石垣が発達して石の重量が増大すると、その重さを逃がすために下部を緩い傾斜とし、上部で傾斜を上げるという役割も果たしている
寺勾配

水口城石垣
角度に変化が無い為、宮勾配に比べると防御力が低いとされる。