高浜茶屋吉貴 その3

楽屋の横、格子で囲まれた一角では舞台に備えて女性が風呂に入っていた。

格子の間に顔とカメラを突っ込み、食い入るように覗き込む。

視角を遮る無粋な格子、いかにも日本人体系の尻、まさしくチラリズムの王道、日本万歳とはこのこと。

角度を格子に突っ込んだ顔の角度を変えると白髪のおじさんが陰部凝視。

「ふてえ奴だ」、つい口にしてしまったが、よくよく見ると女性の体を洗う役割らしい。

しかし女性の裸を目の当たりにしながらこの達観した表情はどうだろう。自分だったらきっと還暦過ぎてもこんな表情はできないだろう。

どんな人生を送って来たんだろうか、いくつからこんな仕事をしているんだろうか、妻子はいるんだろうか、彼の顔に刻まれた皺を眺めながら彼の半生について色々思いをはせてみた。

股間に落ち着いており、異常無し。

いや、これはこれで異常か。

楽屋を挟んでこちら側では女性が肩をもんでもらっている。

風呂に入っていた女性より立場が上らしく、座る姿も堂々としており、羞恥心も見られない。

そして左上腕部の牡丹の刺青は男の安易な下心を牽制する。

それでも先程の体を洗う老人と比較すると、下心が見え隠れする表情。

少し開いた裾が気になって位置を変えてみる。

HPを見てくれるチラリズム大好きな男性諸君の為にこれはアップで掲載すべきだと判断。

少し暗い…かな?


ではフラッシュ撮影にて…。

「光が散るぅぅ!!」
格子の間に貼られた網でフラッシュの光が反射してしまい撮影不可能。
高々度なフラッシュトラップ、まさしく江戸の知恵。


申し訳ない、チラリズム大好きな男性諸君。この償いはいつかどこかで。

大きな挫折感を胸に一階に降りよう。

下りボタンを何度も何度も押してみたのだが、エレベーターが開かない。
ボタン横、壁からビヨヨンとはみ出たケーブルを傍目に何度も何度も押してみる。

背後に嘲笑の気配を感じつつ、この日最後のトラップに挫折感は更に大きくなっていった。

一階に戻ると受付のおばさんがお茶と菓子を用意して待っていてくれた。
「どうでした?ああいった大きな人形はとても高価なので当然なんですけど、最近は雛人形や五月人形も小さいのが多くて人形業界も大変なんですよ。」
大変という割には妙にのんびりとした口調だ。見た感じあまり客の入りも無さそうなのにガツガツしたところが無い、きっと育ちが良いのだろう。
上にいる時は気付かなかったがむしょうに喉が渇いていた。冷たいお茶を喉を鳴らしながら飲み終えると、意識は急速に現実に戻る。

「最近はおじいさんやおばあさんが孫への贈り物として人形あげても、喜ばれないことも多いみたいです。」
自分が興味無いと思ったのか、先程とほぼ同じ趣旨の内容ながら、おばさんは言葉を変えてきた。

決してその手の話は嫌いではない。
「そうなんですよ、最近の日本はね、……」
口を開いてから改めて分かった、自分はこの手の話が嫌いというより大好きなのだ。
「結局はですね……」
「○△×…」
「※$…」


結局、見学に要した時間をはるかに越える時間をおばさんとの会話に費やし、外に出た時は陽がだいぶ傾いていた。

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