南吉は童謡・童話・俳句・短歌と多くの作品を残している。その中で童話4編、詩4編を紹介。童話4編はあらすじで紹介。

南吉の作品は「青空文庫」で数多く読むことができる。→新美南吉の作品

おじいさんのランプ(あらすじ)
ごんぎつね(あらすじ)
手袋を買いに(あらすじ)
花のき村と盗人たち(あらすじ)


デンデンムシカナシミ
落葉
天国
手紙
去りゆく人に
仔牛


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おじいさんのランプ

かくれんぼの最中に倉の隅から古いランプを見つけた東一がおじいさんにそのランプを見せるとおじいさんは昔話をしてくれた。

まずしい巳之助は親も身寄りもないまま子守や使い走り等、村の世話係をしてその日その日を暮らしていた。
人力車の曳子の手伝いで大野を訪れた巳之助は、夜だというのにランプの灯りで竜宮城のように明るい町を見て驚く。
巳之助の村にはまだランプなどない。巳之助は村でランプを売ればきっと儲かるに違いないと、ランプ屋にお願いして安くランプをわけてもらう。案の定、村でランプはよく売れた。年月は過ぎて一人立ちできた巳之助はお嫁さんをもらうこともできた。

ある日ランプの芯の仕入れで大野にやってきた巳之助は今度はランプ以上に明るい電気の光を見て、今後自分の商売が立ち行かなくなるのではないかと焦りを感じる。しばらくして巳之助の村でも電気がひかれることになると、巳之助は人を恨まずにいられなくなり、昔世話になった区長の家に火をつけようと火打ち石をもって出かけるがなかなか火はつかない。マッチをもってくればよかったと思った瞬間に自分がしようとしている事のおろかしさに気付いた巳之助はランプ売りの廃業を決意する。


半田池のほとりの木に売り物のランプをぶらさげた巳之助は「わしの商売のやめ方はこれじゃ」と、石を投げてランプを壊し始める。三つ壊した所で涙が出てしまい、そのまま家に帰った。その後巳之助は本屋を始めた。

この巳之助が東一のおじいさんなのである。ランプをもったいながる東一におじいさんは言った、「もったいないことをしたが、自分の商売のやめ方はなかなか立派だった。いつまでも古い商売にかじりついたり、世の人を恨んだり、昔の方がよかった等と意気地のないことをしては決してしないということだ。」


東一はおじいさんの顔を長い時間見つめたあと「おじいさんはえらかったんだね」と言って、古いランプを見つめた。
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ごんぎつね

中山の近くの山中に「ごんぎつね」という狐がいた。ごんはひとりぼっちだったが、畑を掘り散らかしたり、つるしてあるとうがらしをむしりとったりと、たいそういたずら好きな狐だった。
ある日、ごんは川で網をはって魚をとっている兵十を見かけ、こっそり魚籠に入れてある魚を逃がしはじめる。
最後にうなぎを逃がそうとした所で兵十に見つかり、首にまきつけたまま逃げ出した。

十日ほどたって、兵十の母親が死んだ事を知ったごんは、一人ぼっちになってしまった兵十に自分と同じ憐れみを持つと同時に、兵十の母親はきっと最後にうなぎを食べたかったに違いないとと思い、自分のしたいたずらを後悔する。

その後ごんは山の中でとれた栗やキノコをこっそり兵十の家に届け始めた。兵十は誰がくれたのかむろん分からない。
いつも届けられる栗やキノコは神様がくれたと思いはじめた兵十にごんは少し不満を感じたりもしたが、ごんはいつものように栗を届けに行った。しかし、ごんがこっそり入ってきた事に気付いた兵十に火縄銃で撃たれてしまう。ごんを撃って近づいた兵十は土間に置かれた栗に気付きびっくりする。

「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」

ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずいた。兵十は火縄銃をばたりととり落した。青い煙が、まだ筒口から細く出ていた。
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手袋を買いに

洞穴に親子の狐が住んでいた。初めて雪を見た坊やはその冷たさにびっくりする。その小さな手がしもやけになっては可哀想だと思ったお母さんは、夜になると坊やを連れて町に向かう。
町の光が見えるところまで来ると、お母さんは昔、人間にひどい目にあわされた事を思い出し、どうしても町に近づけない。坊やがせかすので仕方なくお母さんは坊やを一人で町に行かせる事にした。お母さんは坊やの片手を人間の手にかえて言った。

「トントンと戸を叩いて、今晩はって言うんだよ。中から人間が、すこうし戸をあけるからね、その戸の隙間から、人間の手をさし入れてね、この手にちょうどいい手袋頂戴って言うんだよ」

よちよち歩きで帽子屋にたどりついた坊やはお母さんに言われたとおり、戸をノックした。少し開いた隙間からこぼれる電燈の灯りにびっくりした坊やは間違って、人間の手の方でなく、本当の狐の方の手を出してしまう。

「このお手々にちょうどいい手袋下さい」

帽子屋はおやおやと思ったが、坊やの持ってきたお金が葉っぱでない本物だと確かめると、その狐の手に暖かい手袋をつけてやった。

町の見える場所から坊やの帰りをふるえながら待っていたお母さんは、無事坊やが戻ると涙が出るほど喜んだ。
お母さんは坊やから人間は思ったよりも怖くなかった事を聞くとあきれたが、
「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやいた。
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花のき村と盗人たち

花のき村に五人組の盗人がやって来た。5人のうち4人は昨日まで仕事を持って旅をしていた者で、もともとの盗人はかしら一人だった。
花のき村に入ったかしらは、4人の子分に村の様子を見に行かせるが、子分達は自分の元の仕事の気分が抜けきれず、まともな下見にならない。
子分達をしかりつけ、もう一度様子を見に行かせたかしらの前に、品の良さそうな子供が現れ、仔牛を預かって欲しいと手綱をかしらに渡して走っていってしまう。

楽に仔牛を手に入れる事ができたと涙が流して笑いだすかしらだったが、涙はとまらない。かしらは嬉しかったのだ。
今まで人に信用されずに生きてきたかしらに、子供は何の疑いも持たずに仔牛を渡し、預かった仔牛もかしらを嫌がる事なくおとなしくしている。子供の頃のきれいな心を取り戻せた気分だった。

その後、日も暮れたが、子供は戻ってこない。子分達に訳を話して子供を探したが見つからない。仕方が無いので村役人の所へ尋ねに行った。
そこでもやはりどこの子供か分からなかった。役人の家では、最初は自分らが盗人であるとばれるのではないかと、心配したかしら達であったが、村役人の老人は疑う事もなく、酒にさそう。その心にかしらは再び涙を流す。
楽しい時間を過ごしたかしらは自分達が実は盗人であったと告白する。そして子分達はまだ何もしていないので許してやってくれと懇願する。

翌日、子分四人はそれぞれ別の場所に出て行った。彼らは、かしらから言われた、二度と盗人になってはいけないという言葉を守らなくてはいけないと思いながら出て行った。

結局子供はどこの子供が分からないままだった。村の人達はきっと、お地蔵さんが村を守ってくれたのだと思った。心の善い人々が住んでいる花のき村だったから救ってくれたのである。そうならば、村というものは心の善い人々が住まねばならないということでもあるのだろう。
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でんでんむしのかなしみ

 一匹のでんでんむしがありました。
 ある日、そのでんでんむしは大変なことに気がつきました。
「わたしは今まで、うっかりしていたけれど、わたしの背中の殻の中には、悲しみがいっぱい詰まっているではないか。
 
 この悲しみは、どうしたらよいでしょう。
 でんでんむしは、お友達のでんでんむしの所にやってきました。
「わたしはもう、生きていられません。」
と、そのでんでんむしは、お友達に言いました。
「なんですか。」
とお友達のでんでんむしは聞きました。
「わたしは、なんという、不幸せものでしょう。わたしの背中の殻の中には、悲しみがいっぱい詰まっているのです。」
と、始めのでんでんむしが、話しました。
 すると、お友達のでんでんむしは言いました。
「あなたばかりではありません。わたしの背中にも、悲しみはいっぱいです。」

 それじゃ仕方ないと思って、始めのでんでんむしは、別のお友達の所へ行きました。
 すると、そのお友達も言いました。
「あなたばかりではありません。わたしの背中にも、悲しみはいっぱいです。」
 そこで、始めのでんでんむしは、また別の、お友達の所へ行きました。
 こうして、お友達を順々に訪ねて行きましたが、どのお友達も、同じことを言うのでありました。

 とうとう、始めのでんでんむしは、気がつきました。
「悲しみは、誰でも持っているのだ。わたしばかりではないのだ。わたしは、わたしの悲しみを、こらえていかなきゃならない。」
 そして、このでんでんむしは、もう、嘆くのをやめたのであります。
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落葉

私が烏臼の下を
ゆくと
金貨でもくれるように
黄い葉を二枚
落としてよこす
さて私は
この金貨で
手套を一揃買って
懐かしい童話の狐に
もってってあげよう
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天国

おかあさんたちは
みんな一つの、天国をもっています。
どのおかあさんも
どのおかあさんももっています。
それはやさしい背中です。
どのおかあさんの背中でも
赤ちゃんが眠ったことがありました。
背中はあっちこっちにゆれました。
子どもたちは
おかあさんの背中を
ほんとうの天国だとおもっていました。
おかあさんたちは
みんな一つの、天国をもっています。
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手紙

うん クリスマスが
来るね
君のとこへも
ここへも
河合よ
あしたを
待とうよ
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去りゆく人に
おまえとふたりで建てた
丘の上のふたりの家を壊してしまおう

美しい台所も、ここちよい居間も
陽のあたるテラスも壊してしまおう

ふたりの椅子は、つぶして燃してしまおう

ふたりの寝台は
どこかの海に流してしまおう

ふたりで植えた花壇は
ひっこぬいて捨ててしまおう

ふたりで飼った小鳥は
扉をあけて逃がしてやろう

ふたりの子どもは
どこかの森や、どこかの街へ
旅に出してやろう

子どもにつけた名前は
かわいいあの名前は拭って忘れてしまおう

おお、みんな、おまえと
ふたりで描いていたすべてを捨ててしまおう

そして最後に
ふたりでながいあいだ保ってきた
ふたりのあいだの小さい灯(ひ)を――
おまえの掌(て)とわたしの掌で
かこってきたこのなつかしいひとつの灯を
そっと吹きけそう

そっと吹きけしてしまおう
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仔牛

仔牛は日向にたっていた

細い四足すっきり伸びて
小さいひづめは??(はこべら)ふんで。

日永、半日
たっていた

青いお目々は牡丹をみつめ
黝いお鼻は匂いにぬれて。

すると日暮にお角が生えた。
空に小さく三日月でてた。
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