美保関海軍望楼跡? その1
(松江市  2008/12)

18切符一人旅の目的地を山陰方面と定めた後、その方面の戦争遺跡を本やネットで探した。見つけたのが山陰中央新報から転載された「美保関海軍望楼跡を発見」「日露戦争時機密施設 往時伝える切石造り」という記事だった。
日露戦争直前に築かれたというこの望楼跡には望楼の他に官舎跡も残り、当時の資材も散乱しているとのこと。これは素晴らしいと更にネットで探してみたがレポートどころか、それ以上の情報を見つけることもできなかった。


最近戦争遺跡の大きいレポートができておらず、これは久しぶりにレポートし甲斐のある物件だということで発奮、島根に着いたその日に早速出かけた。


ただ転載記事の最後に書いてあった、「望楼跡は危険な場所にあり、一般の人は立ち寄れない。」という文章を軽く見過ぎていた…。

googleの航空写真を貼り合わせて作った腕山周辺図。


山中のルートは全く不明。恐らく岬先端の東側で岩場に出て、そこから海岸線沿いにぐるっとまわって途中で撤退した。


望楼跡は山頂からピラミッド岩線上の北側部分にあると推測したのだが…。

訪問前、地図による下見の段階では航空写真左下の港に車を停め、海岸沿いに岬の先端まで行ければいいなと思っていた。
しかし実際に港に車を停めて見ると、港からすぐの部分が海に切り立った崖となっており、海岸沿いに北上するのは不可能だと分かった。
山の中を突っ切ろうにも山肌は結構な崖となっており、山に取り付く所もない。途方にくれて一服していると、カブに乗ったおじさんが釣りにやって来た。山中を通っての岬方面への行き方を聞いてみると、おじさんは釣りでちょくちょく岬先端まで行っているらしい。更に建物跡の事も訪ねると、幼い頃父親からこの辺りに日露戦争関係の施設があったと聞いたことがあるらしい。しかし井戸跡ならあるが建物跡は見た事がないとのこと。
まぁ井戸跡があるなら地道に探せばなんとかなると思い具体的な道を聞いた。すると、ここまでの会話でおじさんの冒険魂に火がついてしまったらしく、岬まで案内してくれるとのこと。


急展開にとまどう自分におじさんは「大人に冒険は必要だ」と微笑みかけた。

港から若干戻った所に山への取り付き点があるとのこと。車を少々戻った所に停めて山中へ。


いきなりの急勾配で息が切れてしまい、すぐにおじさんに引き離された。おじさんはたまに立ち止まって待っててくれた。


すごく元気なおじさんに年齢を聞いてみた。


「72歳だ。」


帰ったらジョギングはじめようと思う。

15分ほど歩くと人工的な石組みが見えてきた。
正直当時のものかどうか分からないが、周辺には当然民家や施設も無いので恐らくそうなのではないかと勝手に推測。

あちらこちらに明らかに人の手が入った削平地が見られ、その周辺を高さ3,40センチの石組が囲う。


気が弱い自分としては案内してもらっている立場上、あまり細かく見ることができなかったが、やはり関係施設の跡だとは思う。


おじさんは「まぁ好きなだけ写真撮れ」とのこと。

おじさんに教えてもらった井戸跡。大きな石組みで、一辺2m弱ありそう。
飛び出た鉄骨も若干見られる。

中は埋まってしまっており、かなりゴミが捨てられていた。


岬方面に釣りに来る人が捨ててくのだろう。となるとそこそこの人が通るわけで、すぐ見えるような所には建物跡はないだろう。

最初の井戸跡から少し入った所にあった井戸跡パート2。最初のものより更に大型で、高さも結構ある。
遠くから見た時、最初は井戸ではなく、何らかの建物かと思ってぬかよろこびした。

埋まってはいるが、道から外れているのでゴミは捨てられていない。

とりあえず道から外れて、薮の中へ。
写真中央に見えるのが二つ目の井戸。
あちこちで石組みは見られるが、転載記事にあったバッテリーやビール瓶の散乱はこの辺りでは見られない。

何やら人工的な穴の開いている石。
結構アップダウンが激しくて体力が無くなってしまい、近くに寄って見て見る余裕は無かった。

道から外れているので結構な薮。


おじさんがやたらと「俺はこの辺りをよく知っているから大丈夫」と話しかけてくる。
もしかして、おじさんは自分自身にそう言い聞かせているだけではないかと少々心配になってきた。

削平地に残る礎石っぽい石。
辺りは海に向かう下りに入る。建物跡があるとすればこの下り区域の周辺ではないかと思うのだが、おじさんはとりあえず岬へ岬へと向かう。


もちろん自分はおじさんに従う。

しばらくして海辺の岩礁地帯へ。
正直、この辺りに建物があるとは思えないが、岬先端から再度山中に入れば何らかの発見はあるのではないかと先へ進む。


広い岩棚で休憩。一服しながらおじさんにもらったミカンをほうばる。登りの早歩きでは大敗北したが、ミカンの早食いなら負けない。
おじさんが1/4食べる間に完食、おじさんの少し驚いた顔が心地良かった。

冬の日本海ということで海は結構な荒れ具合。おじさんは曰く、昨日よりは少しおさまったとのこと。


というより、昨日もおじさん来たのか…。すごい体力だ。

はじめは滑りやすくはあるが、割と平らな岩の上を歩くだけだったが、すぐに岩越えコースとなる。
数度、泣けてくるくらいの高さの岩を超える。落ちたら間違いなく没。昨年行った蓋井島の海岸沿いも結構きつかったが、それより遥かにきつく恐ろしい海岸だった。


残念ながらそう言った所は余裕が無いので写真に撮れていない。

岬近く。
木々から突き出た岩がとても印象的、勝手にピラミッド岩と命名。
自分の自分による自分のための命名だ。


岬先端の大きな岩から写真を撮れとおじさんはのたまう。しかし高さ3〜4mあって切り立った岩、どう考えても登ることはできない。


おじさんは「大人は冒険だ」と言って更に勧めてくれるが、「それは冒険ではなく、無謀というものだ」、そっと心の中でつぶやいてみたりする。

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