紫電改保存館 その1
(南宇和郡愛南町 馬瀬山山頂公園内  2005/3)
(0895)72-3212
9:00〜17:00
休園日 無休
入園料 無料(御荘湾ロープウェイ 大人往復900円 小人450円)
駐車場 無料

この紫電改保存館のある高知県との県境に近いリゾート公園「馬瀬山山頂公園」は、松山、高知などの主要都市からかなりの距離がある。
今回松山からレンタカーを使用したが、ここ以外に松山城と宇和島城を少し見学しただけで一日が終わってしまった。静態保存の紫電改一機にそれだけの時間を用いることができるかどうかが、この保存館への大きな来訪目安となる。宇和島から南の海岸沿道路は景色もなかなか良いので、ドライブを兼ねてというのが無難だろう。


有名な零戦は国内に数機保存されているが、紫電改が保存されているのは国内でここのみ。紫電改は太平洋戦争末期、性能的にもう勝てなくなっていた零戦に変わる新型戦闘機として川西飛行機にて開発された。その名の通り「紫電」の改良型で、「紫電二一型」移行が通称「紫電改」と呼ばれた。生き残りのベテランパイロットで編成された343空で用いられ、特に昭和20年3月の米軍呉港襲撃時には343空の迎撃により敵機52機を撃墜している。
零戦以降、後継機にめぐまれなかった海軍としては久しぶりの高性能機であったが、空襲による工場の破壊や資材不足などで400機ほどしか製造されなかった。この保存館で展示されている機体は昭和53年11月に愛媛県久良湾の海底で発見されたものを翌年引き上げて補修したもの。補修時に塗装されなおしているが、機体自体はオリジナルに近い状態となっている。

海上を渡る御荘湾ロープウェイで馬瀬山山頂公園へ。ロープウェイというとどうしても高低差の大きい所が多いので、下の海面と併せて何やら不思議な感覚。
乗ってる時間は8分、景色はイマイチだったが、トンビがすぐ近くを飛んでいて迫力があった。

ロープウェイを降りると目の前には高さ110mの宇和海展望タワーが。しかしそこはツアーの疲れが出ている三十路二人組、目的の紫電改保存館へのみ足を向ける。歩くこと数分で紫電改保存館へ到着。
思ったよりも地味な建物だった。


派手な飾りつけもなく、建物の真ん中に鎮座する紫電改。
全長、全幅あまり零戦と変わらないのだが、太い胴体のせいでだいぶ大きく感じる。


零戦と比較して絞り込まれたカウリングが目につく。
プロペラは4枚、後方に大きく曲がっているのは墜落着水時の衝撃。


腐食破損したラダー。折れた水平尾翼の修理、防錆塗装や弾痕埋めなどの補修は行われているが基本的には引き上げられた状態の姿を保っている。


斜め後方、好きなアングル。

20mm機銃×4丁の武装。通常紫電改は20mm機銃でも発射速度が速く性能が良いとされる九九式二号20mm機銃を装備している。館内の説明板を見ると20mm一号機銃と記載されている。大戦末期、資材不足、工作精度の低下などから九九式二号でなく、九九式一号機銃を装備したものとみられる。

元祖(?)紫電はもともと中翼式(胴体の中央近くに主翼)であったため、主脚を長くする必要があった。その長い脚を翼内に引き込むにしても今度は胴体が邪魔になってしまう。そこで引き込み方法に二段式引込を採用したが故障頻発だった。
紫電改は低翼式(胴体の下部に主翼)なので脚の引き込みはオーソドックス。なお、この低翼化により紫電の弱点とされた視界の悪さが解消された。

中島製の誉21型エンジン搭載。1825馬力。戦争末期は工作精度も低くトラブルも少なくなかった。

主翼。腐食して骨だけとなったフラップが痛々しい。


30年以上海水につかっていたため腐食が激しく、外板は薄くなってしまっている。

真後ろから撮影。シンメトリーな写真もたまにはいいかなと。

昭和20年7月24日の空戦では6機の未帰還機があった。この機体もその中の1機であるが、長く海中に没していたため機体番号の読み取りは不可能、遺体や遺留品見つからなかったので、搭乗員の特定ができない。
機体の慰霊の為の雛壇が置かれてあり、6人の写真と戒名がまつられている。

機体と祭壇。
欲を言えば塗装は防錆のみにして、引き上げ時状態をキープしてほしかった。
あちこち腐食しているのに塗装は普通、なにやらアンバランス。


二階から撮影。下からでは見難いアングルを見ることができ親切。特に操縦席まわりは下からでは難しい。少し「ハリボテ」チックに見えないこともない。写真右端は受付兼土産物売場。

二階正面から撮影。
後方にはこの機体から取り外したパーツや引き上げ時の写真などが展示されている。
中央奥のプロペラは同じく引き上げられてた艦上攻撃機「天山」のもの。

二階から見下ろした主翼。
紫電改の大きな特徴の一つである「自動空戦フラップ」。空戦時の旋回など揚力が必要となるとき自動でフラップの上げ下げを行う装置。
これによって、重い機体の割には旋回性能ガ良好であった上、自動化によってわずらわしい操作が軽減された。

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